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残業代請求における残業時間の立証責任

はじめに

近年、民法改正に伴う労基法の改正もあったこともあって、残業代請求事件が多くなっています。

辞めた従業員から、突如として残業代の請求がなされることが典型的な事例ですが、請求されるがままに残業代を支払う必要はありません。

残業代は、時間外労働に対する対価ですから、従業員が時間外労働をしたことを立証できなければ、残業代を支払う必要はありません。

もっとも、使用者には、労働者の労働時間を適正に把握する義務があります。

そのため、労働者が一応の立証をしたと評価できる場合には、労働時間が認定される場合もあります。

立証責任は労働者、使用者のどちらにあるのか?

残業代請求において、残業時間の立証責任は請求をしてきた従業員にあります。

労働契約上の賃金請求権は、労務の提供と対価関係にあります(民623条)。また、その請求は労務の提供が終わった後でなければ請求できないとされています(民624条1項)から、現実に労務の提供をしたことを主張立証しなければ賃金請求は出来ません。

残業時間の立証が争点となった裁判例

実際に残業時間の立証が問題となった裁判例は多くあります。

例えば、ゴムノイナキ事件(大阪高判平成17年12月1日)があります。

事件の概要

この事件は、会社がタイムカード等による客観的な出退勤管理を行っておらず、労働者側も労働時間を証明するための客観的な証拠が用意できず、その他の証拠も正確な労働時間を立証するものではなかったという事案です。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

しかしながら、裁判所は「タイムカード等による出退勤管理をしていなかったのは,専ら被控訴人(註:使用者)の責任によるものであって,これをもって控訴人(註:労働者)に不利益に扱うべきではないし,被控訴人(註:使用者)自身,休日出勤・残業許可願を提出せずに残業している従業員が存在することを把握しながら,これを放置していたことがうかがわれることなどからすると,具体的な終業時刻や従事した勤務の内容が明らかではないことをもって,時間外労働の立証が全くされていないとして扱うのは相当ではないというべきである。」としました。

結論としては、裁判所は、問題となった期間中、平均して午後9時まで(所定労働時間は午後5時半まで。)時間外労働を行っていたものと認めました。

ポイントと解説

会社には、労働者の労働時間を適正に把握する義務があることから、労働者の主張に対して、使用者が具体的な反証を行えない場合には、労働者の主張に沿った労働時間が認定されてしまうリスクがあります。

ゴムノイナキ事件においても、会社がタイムカード等客観的な労働時間管理を行っていなかったこととは、労働者の責任ではない以上、労働者の不利益(労働時間を短く認定する方向)に取り扱うべきではないとされてしまいました。

また、ゴムノイナキ事件では、会社が、無許可で時間外労働を行っていた社員を放置していたことも認定されているため、労働者が時間外労働の具体的時間を立証できなくても、全く時間外労働をしていないという認定もできないとされました。

このような認定をされないためには、客観的な手法(タイムカードなど)による労働時間管理を徹底し、無許可残業に対しては、明示的な残業禁止命令を行うことによって、残業許可制を運営していかなければなりません。

法改正による使用者の労働時間把握義務

2019年(平成31年)4月から、働き方改革の一環として、労働安全衛生法が改正され、労働時間の把握が義務化されました。

労働時間の客観的把握が義務付けられた背景

以前から、「労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によって、労働時間の適正な把握は義務付けられていましたが、このガイドラインの適用範囲からは管理監督者やみなし労働時間制が適用される労働者については適用対象外とされていました。

しかしながら、管理監督者等であっても、長時間労働やメンタルヘルス不調による健康リスクが高い状況にあることを見逃して良いことにはなりません。

そこで、働き方改革によって、この適正把握義務の位置づけをサービス残業対策から、労働者の健康確保を目的とするものに改め、法律上の義務としました。

労働時間を把握すべき労働者の範囲

この改正によって管理監督者などの労基法41条によって労働時間規制の適用除外がなされている労働者や、みなし労働時間制が適用される労働者についても、労働時間適正把握義務の対象に含まれることになりました。

労働時間を客観的に把握する方法

労働時間を客観に把握する方法としては、タイムカードや、ICカード、パソコンの使用時間等が考えられます。「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」においても、このような客観的な記録を基礎に労働時間を把握することが原則的な方法であるとされています。

始業・終業時刻の厳密な記録

タイムカードを採用している会社であれば、始業及び終業時刻には打刻を行うようにしていていると思いますが、この記録が実際の労働時間と差異が無いように、使用者の残業命令書及びこれに対する報告書など、使用者が労働者の労働時間を算出するために有している記録との突き合わせを行い、ズレがないかどうか、厳密に記録しておく必要があります。

賃金台帳の記入

使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければなりません(労基法108条、同法施行規則54条)。

労働時間に関する書類の保管

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類を3年間保存しなければなりません(労基法109条)。

自己申告制の場合の留意点

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、例外的な労働時間把握の方法として、自己申告制で労働時間を把握する場合の留意点も定めています。

  1. 自己申告を行う労働者や、労働時間を管理する者に対しても自己申告制の適正な運用等ガイドラインに基づく措置等について、十分な説明を行うこと
  2. 自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
  3. 使用者は労働者が自己申告できる時間数の上限を設ける等適正な自己申告を阻害する措置を設けてはならないこと。さらに36協定の延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、労働者等において慣習的に行われていないか確認すること

このように、自己申告制では、(会社からのプレッシャーによる)過少申告があり得ることなどから、自己申告と、実労働時間に相違がないかを確認するように求められています。

労働時間の把握義務における罰則

労働時間の把握義務違反自体に罰則は用意されていません。もっとも、上限規制違反には罰則がありますから、労働時間を把握していないことによって企業が罰則を受けるリスクはあります。

また、労働時間を把握していない場合には、残業代請求されたときに有効な反証ができない恐れもありますので、労働時間把握義務は遵守すべきです。

従業員によるタイムカードの不正が発覚した場合、会社はどう対処すべきでしょうか?

タイムカードの不正打刻は、実労働時間とは異なる賃金を請求することにもなりますから、詐欺罪に当たる場合もあります。

程度や事情によりますが、仮に故意に多くの賃金を得ようとしていた場合には、悪質性の強いものですから、会社としては、事実関係を確認し、懲戒処分などの厳正な処分を取るべきでしょう。

未払い残業代を請求されてお困りなら、残業問題に強い弁護士までご相談ください。

未払い残業代請求は、多くの場合、実際の労働時間(労働時間性も含めて)は何時間であったかが激しく争われることになります。

会社として、残業代は支払わなければなりませんが、払うべき金額がいくらなのかは、争っていく必要があります。労働時間性のみならず、定額残業代制の主張や、管理監督者性の主張等、様々な争点があるため、未払い残業代を請求された場合には、弁護士に依頼すべきです。

弁護士法人ALG&Associates埼玉法律事務所では、交渉段階から、労働審判等まで全ての局面で対応することが可能です。

未払い残業代を請求されてお困りの方は、ぜひご相談ください。

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