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定額残業代制に関する重要判決と時代の変化への対応

辞めた従業員から未払い残業代を請求されたとき

辞めた従業員から未払い残業代を請求された場合、企業側としては、定額残業代の支払いに関する抗弁を行うことも多いと思います。

会社としては、定額で支払う制度という実情がありますから、それ以上を求められることについて、腑に落ちないと思われる経営者の方も多いかもしれません。ただ、定額残業制は、各種割増賃金(残業代)について、あらかじめ一定の金額を支払っておくように定めているシステムですから、実際の時間労働が予定していた時間を超えた場合には、追加して支払う必要はあります。

もっとも、定額「残業代」として支払った部分は、せめて残業代として支払ったことは認めてほしいのが当然の発想でしょう。

仮に、今まで支払ってきた定額残業代が、残業代と認められなかったとすればその分の支払いを命じられるだけでなく、使用者にとって高い基礎単価(定額残業代も基礎賃金に含まれた!)を前提とした残業代の支払いを命じられる可能性もあります。いわゆる「残業代のダブルパンチ」です。

そして、定額残業代制については、最近示された最高裁判決によって、厳格に解するべきであると示されてしまっています。

固定残業代に関するテックジャパン事件
(最一判平成24年3月8日集民240号121頁)

1 事案

人材派遣会社(X社)に雇用されていた派遣労働者(プログラマー)(A)が、X社に対して、平成17年5月から同18年10月までの期間における時間外労働に対する賃金(残業代です。)及びこれについての付加金の支払いなどを求めた事案です。

X社とAの契約

基本給:月額41万円

残業代についての定め:1か月間の労働時間の合計が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間当たり2560円を支払うが、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり2920円を控除する。

Aの主張、X社の主張

Aは、月間180時間以内の労働時間中の時間外労働に対する割増賃金が基本給の中に含まれていないと主張しました。

他方で、X社は、Aとは月間180時間までの労働について賃金41万円を支払うとの合意をしていたから、月間180時間までの労働について時間外手当を支払う理由はないと主張し、仮にAが主張する割増賃金を支払う場合であっても、時間外とされる労働時間を差し引いた月間の労働時間が140時間に満たないときは、1時間あたり2920円を差し引くことができることとなるから、時間外とされる時間を差し引いた結果、月間の労働時間が140時間に欠ける合計92時間30分の賃金27万0100円(92時間30分×2920円)を差し引くべきであると主張していました。

2 テックジャパン事件の判決要旨

明瞭区分性も否定

本件雇用契約は、基本給を月額41万円とした上で、月間総労働時間が180時間を超えた場合にはその超えた時間につき1時間当たり一定額を別途支払い、月間総労働時間が140時間に満たない場合にはその満たない時間につき1時間当たり一定額を減額する旨の約定を内容とするものであるところ、この約定によれば、月間180時間以内の労働時間中の時間外労働がされても、基本給自体の金額が増額されることはない。

また、上記約定においては、月額41万円の全体が基本給とされており、その一部が他の部分と区別されて労働基準法37条1項の規定する時間外の割増賃金とされていたなどの事情はうかがわれない上、上記の割増賃金の対象となる1か月の時間外労働の時間は、1週間に40時間を超え又は1日に8時間を超えて労働した時間の合計であり、月間総労働時間が180時間以下となる場合を含め、月によって勤務すべき日数が異なること等により相当大きく変動し得るものである。そうすると、月額41万円の基本給について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と同項の規定する時間外の割増賃金に当たる部分とを判別することはできないものというべきである。

結論

(1) 残業代の支払いとは認められないとされた。

これらによれば、Aが時間外労働をした場合に、月額41万円の基本給の支払を受けたとしても、その支払によって、月間180時間以内の労働時間中の時間外労働について労働基準法37条1項の規定する割増賃金が支払われたとすることはできないというべきであり、X社は、Aに対し、月間180時間を超える労働時間中の時間外労働のみならず、月間180時間以内の労働時間中の時間外労働についても、月額41万円の基本給とは別に、同項の規定する割増賃金を支払う義務を負うものと解するのが相当である(最高裁平成3年(オ)第63号同6年6月13日第二小法廷判決・裁判集民事172号673頁参照)。

(2) 高い基礎単価(月41万円)を前提とした割増賃金の計算をすべきとされた。

本件雇用契約において、基本給は月額41万円と合意されていること、時間外労働をしないで1日8時間の勤務をした場合の月間総労働時間は、当該月における勤務すべき日数によって相応に変動し得るものの、前記就業規則の定めにより相応の日数が休日となることを踏まえると、おおむね140時間から180時間までの間となることからすれば、本件雇用契約における賃金の定めは、通常の月給制の定めと異なる趣旨に解すべき特段の事情のない限り、Aに適用される就業規則における1日の労働時間の定め及び休日の定めに従って1か月勤務することの対価として月額41万円の基本給が支払われるという通常の月給制による賃金を定めたものと解するのが相当であり、月間総労働時間が180時間を超える場合に1時間当たり一定額を別途支払い、月間総労働時間が140時間未満の場合に1時間当たり一定額を減額する旨の約定も、法定の労働時間に対する賃金を定める趣旨のものと解されるのであって、月額41万円の基本給の一部が時間外労働に対する賃金である旨の合意がされたものということはできない。

補足意見の重要性(差額支払いの合意について)

便宜的に毎月の給与の中にあらかじめ一定時間(例えば10時間分)の残業手当が算入されているものとして給与が支払われている事例もみられるが、その場合は、その旨が雇用契約上も明確にされていなければならないと同時に支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示されていなければならないであろう。さらには10時間を超えて残業が行われた場合には当然その所定の支給日に別途上乗せして残業手当を支給する旨もあらかじめ明らかにされていなければならないと解すべきと思われる。本件の場合、そのようなあらかじめの合意も支給実態も認められない。

3 テックジャパン事件のポイント

テックジャパン事件では、補足意見ではあるものの、従来固定残業代の有効要件とされてきた、①対価性(時間外労働や深夜労働の対価の趣旨で支払われていること。)や、②明瞭区分性(所定内賃金部分と割増賃金部分を判別できること。)のみならず、③差額支払いの合意(一定時間を超えて時間外労働等が行われた場合には別途上乗せして割増賃金を支払う旨の合意)を要件とした点がポイントです。

仮に③の合意がなかったとしても、使用者は、労基法上、その超過分について割増賃金を支払う義務を負いますし、弁済という意味で言えば、残業代として支払ったことが、金額や時間から特定されれば弁済の要件事実を充足するので、③を独立の要件とすることは理論的には必要ないでしょう。

それを敢えて要件としたことは、定額残業制を笠に着たサービス残業や残業代不払いを抑制しようとする裁判所の強い意思を感じます。

労務に関する時代の変化への対応の必要性

テックジャパン事件の最高裁判旨があるまでは、③差額支払いの合意が要件とされるかどうかについて、盛んに議論される状況ではありませんでした。

今まで有効であった固定残業代の規定も、時代の変化とともに有効ではなくなってしまうことがあり得るのです。その場合には、先に述べました「残業代のダブルパンチ」を受けざるを得ず、会社が予想していなかった損害を被る恐れがあります。

だからこそ、労務については時代の変化に対応するために、絶えず見直しを図っていく必要があります。

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